후리가나로 읽는 일본 고전
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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
国枝 史郎의 八ヶ嶽の魔神(やつがたけのまじん)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 160,664자 · 323화면
と、不意に呼びかけた。
「俺だ俺だ早く戸を開けてくれ」――囁くような声である。
誰をいったい呼んでいるのであろう。誰もその辺にはいないではないか。それに戸を開けろと云ったところでどこにも家などないではないか。
森然と四辺は静かである。
と、不思議にもどこからともなく答える声が聞こえて来た。
「おい、誰だ? 権九郎か?」
すると黒い人影は寒そうに声を顫わせながら、
「声音でおおかた解りそうなものだ。こんな所へこんな夜中に俺の他に誰が来るものか」
「誂え物は持って来たろうな?」
「へ、ご念にゃ及ばねえ。数々の売品持って参って候だ、寒くていけねえ早く開けてくんな」
「お前一人で来たんだろうな?」
「こいついよいよ関所だわえ。安宅の関なら富樫だが鼓ヶ洞だから多四郎か。いや睨みの利かねえ事は。……あいあい某一人にて候」
「よし。それじゃ戸を開けるぜ」
声と一緒にガチンという錠を外す音が聞こえて来たがすぐその後からギーという戸の軋る音が幽かにして、雪で蔽われた雑木林にボーと一所火影が射した。
木々で隠され雪で蔽われ外見からはほとんど見えないけれど絶壁の裾の灌木の繁みにどうやら木小屋でも出来ているらしい。