후리가나로 읽는 일본 고전
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わかれのじ
別れの辞
豊島 与志雄
豊島 与志雄의 別れの辞(わかれのじ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 18,330자 · 37화면
あたし、その顔が見たかったわ。見そこなっちゃあいけない……とまあ、そういった場面ね。」
おけいは揶揄するようにわざと感歎の様子をしたが、島村は澄していた。
「そんなことも、あったかもしれないが、その代り、こんなこともあった。或る晩、酔って歩いていると……。」
それは、私が一度聞いた話である。酔って歩いていると、街角の、薄暗いところに、若い女が二人立っていた。安カフェーの女給とも、安料理屋の女中とも、どこかの子守女とも、私娼ともつかない、怪しい風体の女で、蒼ざめてむくんだ頬に白粉をぬっていた。その二人の方に、彼は歩みよって、微笑みかけ、言葉をかけ、ソバを奢ってやろうといって、すぐ側のソバ屋へ無理につれこみ、自分は酒を一本飲み、それから彼女たちに五十銭玉を一つずつ握らして、立去っていった。
それだけの、ばかばかしい話だったが、島村の調子には、冷酷に近いものが籠っていた。
「そんな話、どちらも、何の意味もないじゃないの。」
そう清子が云ったが、何の反響もなく、誰も黙っていた。島村は杯を取上げた。
「島村さん、飲もう、彼女たちのために杯を挙げよう。」
宮崎が夢からさめたように大声をだして、銚子を持って立上ったので、その場の沈黙は救われたが、妙に白けた空気は拭いきれなかった。