후리가나로 읽는 일본 고전
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よばれしおとめ
呼ばれし乙女
岡本 かの子
岡本 かの子의 呼ばれし乙女(よばれしおとめ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 5,165자 · 11화면
「ちょっと、あたしに、その電報頂戴よ」
五月の薄曇りの午前に、千歳は箱根湯本の玉屋の入口の暖簾を潜った。入れ違いに燕が白い腹を閃かして出た。
「やあ、来ましたね。よく来ましたね」
明るい外から入って来たので、千歳の眩んだ眼にはよく判からなかったが、慶四郎は支度して玄関へ出て待っていたらしい。
「あら、病気だなんて……電報うったくせに」
「嘘じゃなかったけど、もう直った」
「まあ……」
千歳が呆れるのも構わずに、慶四郎は無造作に千歳の肩を掴えて向を変えさせ、腕を抱えてぐんぐん外へ連れ出した。家にいるときも慶四郎は悪気もなくよく突飛なことをする男だった。千歳は、今度も何か慶四郎の独り合点でこういう挙動をするのだろうと曳かれるままに連れられて表へ出たが、
「さようなら、お気をつけ遊ばして」
と言って見送る女中達に千歳は慶四郎の露骨な振舞いが少しきまり悪かった。
薄霧の曇りは、たちまち剥げかかって来た。競り上るように鮮かさを見せる満山の新緑。袷の紺飛白に一本独鈷の博多の角帯を締め、羽織の紐代りに紙繕を結んでいる青年音楽家は、袖をつめた洋装を着た師の妹娘を後に従えて、箱根旧街道へと足を向けた。