후리가나로 읽는 일본 고전
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ちずにないまち
地図にない街
橋本 五郎
橋本 五郎의 地図にない街(ちずにないまち)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 16,139자 · 32화면
何か甘ずっぱい風が、氏の胸から背の方へついついと肺臓をぬけてゆくように思われたという。
何がなしにしばらく眼をつぶっていてから、氏はポケットの履歴書を取り出して、これも何げなしにその文字をゆっくりと眺めて見た。士族と断わってあるのが変に滑稽に思われたり、学校への奉職という字が急に憎々しくなったりした。田舎のことがちらと頭をかすめた。しかし氏の連想は、汽車賃どころかもはや自分には今どうする金も一文もない、というところで豆腐のようにぼやけてしまったのである。
氏は後ろざまに、その履歴書を瓢箪池へ投げた。続いて辞令を、謄本を、それから空っぽの蟇口を。
ベンチの横に立っているお情けのような終夜燈の光が、それ等落ちて行く寺内氏の過去を、ひらひらと、幻燈のように青白く照らしてくれた。どんな過去もどんな履歴も、今の自分には何等必要がないではないか――。
「はっはっは」と氏は思うさま笑ってみたのである。と、それに調子を合わせたように、「はっはっは」としかもすぐ氏の横で誰かが笑った。
氏はその時受けた感じを、たとえば何か、固い火箸のようなもので向こう脛をなぐられたような――到底説明しがたい感じだといった。