일본어 읽기 연습

후리가나로 읽는 일본 고전

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なつのはな

夏の花・心願の国

原 民喜

原 民喜의 夏の花・心願の国(なつのはな)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.

N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 152,816자 · 310화면

아오조라 문고

時には正三は単独で逃亡することもあった。彼は一カ月前から在郷軍人の訓練に時折、引ぱり出されていたが、はじめ頃二十人あまり集合していた同類も、次第に数を減じ、今では四五名にすぎなかった。「いずれ八月には大召集がかかる」と分会長はいった。はるか宇品の方の空では探照灯が揺れ動いている夕闇の校庭に立たされて、予備少尉の話をきかされている時、正三は気もそぞろであった。訓練が了えて、家へ戻ったかとおもうと、サイレンが鳴りだすのだった。だが、つづいて空襲警報が鳴りだす頃には、正三はぴちんと身支度を了えている。あわただしい訓練のつづきのように、彼は闇の往来へ飛出すのだ。それから、かっかと鳴る靴音をききながら、彼は帰宅を急いでいる者のような風を粧う。橋の関所を無事に通越すと、やがて饒津裏の堤へ来る。ここではじめて、正三は立留り、叢に腰を下ろすのであった。すぐ川下の方には鉄橋があり、水の退いた川には白い砂洲が朧に浮上っている。それは少年の頃からよく散歩して見憶えている景色だが、正三には、頭上にかぶさる星空が、ふと野戦のありさまを想像さすのだった。『戦争と平和』に出て来る、ある人物の眼に映じる美しい大自然のながめ、静まりかえった心境、――そういったものが、この己の死際にも、はたして訪れて来るだろうか。