후리가나로 읽는 일본 고전
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
野村 胡堂의 奇談クラブ〔戦後版〕(きだんクラブ〔せんごばん〕)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 10,902자 · 22화면
その大事な条件も知らずに、六郷左京は上滑りな美に追われて、八十日余りも鑿を振っていたのです。
「多与里殿、もっと此方へ寄るが宜い、――明日からでも彫物は新しく始めよう、その前祝いに、夜とともに飲み明かし、語り明かそうではないか――御殿へは、夜業を始めるといえばそれで済む」
左京の手は又伸びました。もう多与里の手首ではなく、その丸い小さい肩――激情と娘らしい恐怖にワナワナ顫える肩を抱いて、自分の膝の上に引寄せたのです。
だが、何んとしたことでしょう。六郷左京の頭の中は水のように澄み切って、自分のこの端た無い行為に対して、一挙手一投足、小さい言葉の末々までも、反芻し批判して、舞台の役者の演技のように、その反応と効果ばかりを狙っているのはなんとしたことでしょう。
六郷左京は、その道にかけては、戦場万馬往来の古つわものでした。唯の小娘――それはお人形のように綺麗であるにしても、意気地も張もない多与里に、さして魅力を感ずる筈もなく、心の中では入山形に二つ星の、某太夫の強靭な恋の技巧を考え乍ら、この娘を一つ沸らせて見ようと言った、悪魔的な遊び心と、もう一つは、そうすることによって此娘からお七的な激情を呼び覚まし、それを鑿の芸術に活かしてやろうといった、逞ましい野心が、勃々としてその功名心を煽ったのです。