일본어 읽기 연습

후리가나로 읽는 일본 고전

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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

野村 胡堂의 奇談クラブ〔戦後版〕(きだんクラブ〔せんごばん〕)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.

N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 11,195자 · 22화면

아오조라 문고

その刹那、――アッと言う間もなかったでしょう、海風にさらされて、ひどく腐蝕して居た欄干は、夫人の体重に堪え兼ねてポッキと折れ、夫人はそのまま、数百尺の下へ投げられた花束のように落ちて行ったのでしょう。

展望台は大岩の上に張出した建築で、下は千尋の死の碧海になって居ることは、前にもお話しました。恐らく志津子夫人は、其儘波の底に沈んだらしく、永久に死体も揚りませんでした。其辺は犬の牙を噛み合せたような恐ろしい岩の林で、それを攻めなやむ怒濤の凄まじさ、どんな軽舸でも近づけるところでは無い、近づいたところで、岩と藻とが怪奇な淵を形成している中から、死体を探し出す工夫などはつかなかったのです。

それを見ると、南伊太利に住んで、海にはよく馴れている筈の千束守は、恐らく前後の思慮もなく、夫人の後を追って、展望台から飛込んだことでしょう。兎も角、異常な気合に女中達が展望台へ駆け上った時は、美しい夫人の姿も、それを護る騎士のように、一寸も傍を離れない千束守の姿も其処には無かったのです。そして恐る恐るこわれた欄干のところから、眼下数百尺の海を望むと、中途に飛出した銀灰色の岩に、夫人の美しい綾糸の帽子と、千束守の手巾らしいものが、静かな海風に吹かれて息づくようにヒラヒラと動いていたということです。