후리가나로 읽는 일본 고전
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かていのひとへ
家庭の人へ
寺田 寅彦
寺田 寅彦의 家庭の人へ(かていのひとへ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 4,527자 · 9화면
今から数年前三越かどこかで、風呂の湯の温度を見るための寒暖計を見付けて買って来て、宅の女中にその使用法を授けてみたのであるが、これは結局失敗に終った。先ず初めは、浴槽の水を掻き廻さないで、水面二、三寸のところへ寒暖計の球をさしこんで、所定の温度に達した頃に報知して来るのだから、かき廻さないで飛び込めば上の方は適温だが、底の方はまだ水である。掻き交ぜれば、ぬるくてふるえ上がってしまう。またよくかき廻して丁度になっていても、一方で燃料が唸って燃え上がっているのでは這入っているうちにすぐに猛烈に熱くなって来るから工合が悪い。これらも少し科学的に頭を使ってやれば、燃料が燃え切った頃にだいたい丁度になるようにするくらいは、何でもない事であろうが、これは現在の状況では、要求する方が無理であろうと思って、とうとう断念してしまった。それから一年くらいはその寒暖計が風呂場のどこかの隅に所在なさそうにころがっていたようであったが、いつ無くなるともなく見えなくなってしまってそれっきり永久に消えてなくなってしまったのである。これは適者生存自然淘汰の原理によって、元来寒暖計などあるまじき原始人の風呂場にあった寒暖計が、当然に自然に消失したものであろう。