후리가나로 읽는 일본 고전
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まぼろしのかなた
幻の彼方
豊島 与志雄
豊島 与志雄의 幻の彼方(まぼろしのかなた)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 41,763자 · 84화면
毛がかかっていないのに、何度も額を撫で廻すことがあった。氷嚢をのせる前には、必ず乾いた手拭で拭わせた。手指の爪の根元に白い部分が見えないからと云っては、病気がそんなにひどいのだろうかと怪しんだ。
「大丈夫でございますよ。」と看護婦が答えた。
「そうね。お腹も軽くなったようだから。」
それでも彼女はやはり爪を気にしていた。
明るみのない盲いたような不安が、次第に順造の心に喰い入っていった。何か不可抗的なものが、じりじりと迫ってきた。
或る晩、彼女はどうしても起き上ると云ってきかなかった。順造と看護婦とでいくら説き聞かせても、更に承知しなかった。云うままに任せるの外はなかった。布団を積んでそれによりかかって坐らせた。
彼女はほっと息をついた。
「私こんな嬉しいことはない。もう癒ったのも同じね。」
不思議そうにあたりを見廻してる彼女の様子に、順造は涙ぐんだ。
「屹度癒るよ。」
あたりがしいんとしていた。
「あなた!」
秋子は突然高い声を出した。眼を見開いて障子の方を見つめていた。彼はその視線を辿った。……と、ぞっと震え上った。
障子の腰硝子に人影が見えていた。眼玉ばかり大きな骸骨に似た顔が、ささくれ立った乱髪に縁取られていた。