후리가나로 읽는 일본 고전
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きょうふじょう
恐怖城 他5編
佐左木 俊郎
佐左木 俊郎의 恐怖城 他5編(きょうふじょう)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 143,735자 · 290화면
――とそのうちに、彼女の夫は突然ホテルから逃げ出してしまった。それを夫の叫び声で知った彼女は、夫と協力して赤ん坊を取り戻すべく逃げ出してきたのだった。
「――あの窓の辺りなのよ。そらね、聞こえるでしょ。そら、あの雲の上から聞こえるの、坊やの泣き声でしょ」
彼女は手を上げて、晴れかけた靄の上へ蜃気楼のように浮かんでいる高層建築を指した。その指先は白い一本の絹のように小刻みに、敏速に、神経的でしかも恐怖的な顫えを顫えつづけていた。
「そらね。あの泣き声、坊やでしょ?――あらっ! とてもかわいそうね。そら、とてもひどく泣いているわ。聞こえるでしょ?」
彼女はじっと耳を澄ました。彼も眉を寄せるようにして耳を立てた。が、冷えびえと顫えている帳のかなたからしてくる雑音を、彼ははっきりと聴き分けることができなかった。
「あらっ! 来たわ! 来たわ! 助けてください! 助けてください! わたしをまた引っ張りに来たのだわ! そら来たわ! 来たわ!」
彼女は突然叫びだして、彼の腕に縋りついた。そこへ、白服の看護婦と黒い半纏の看護人とが五、六人ばたばたと駆けつけてきた。
「今度は、この方を自分の夫だと思っているのだわ」