후리가나로 읽는 일본 고전
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おんしゅうのかなたに
恩讐の彼方に
菊池 寛
菊池 寛의 恩讐の彼方に(おんしゅうのかなたに)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 22,824자 · 46화면
彼らが嗤笑の表情は、いつの間にか驚異のそれに変っていた。市九郎は梳らざれば、頭髪はいつの間にか伸びて双肩を覆い、浴せざれば、垢づきて人間とも見えなかった。が、彼は自分が掘り穿った洞窟のうちに、獣のごとく蠢きながら、狂気のごとくその槌を振いつづけていたのである。
里人の驚異は、いつの間にか同情に変っていた。市九郎がしばしの暇を窃んで、托鉢の行脚に出かけようとすると、洞窟の出口に、思いがけなく一椀の斎を見出すことが多くなった。市九郎はそのために、托鉢に費やすべき時間を、更に絶壁に向うことができた。
四年目の終りが来た。市九郎の掘り穿った洞窟は、もはや五丈の深さに達していた。が、その三町を超ゆる絶壁に比ぶれば、そこになお、亡羊の嘆があった。里人は市九郎の熱心に驚いたものの、いまだ、かくばかり見えすいた徒労に合力するものは、一人もなかった。市九郎は、ただ独りその努力を続けねばならなかった。が、もう掘り穿つ仕事において、三昧に入った市九郎は、ただ槌を振うほかは何の存念もなかった。ただ土鼠のように、命のある限り、掘り穿っていくほかには、何の他念もなかった。彼はただ一人拮々として掘り進んだ。