일본어 읽기 연습

후리가나로 읽는 일본 고전

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あいのごとく

愛のごとく

山川 方夫

山川 方夫의 愛のごとく(あいのごとく)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.

N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 103,908자 · 210화면

아오조라 문고

保井夫婦については、しあわせなのだというふうにしか、私は思ったことがなかった。私は他人たちに、こちらが弾き出されるような幸福のほかはみたくなかった。不幸をかんじるのが、私はきらいなのだ。私の関心はすべての他人たちに笑顔の壁をもとめ、その先に深入りすることがなかった。そして保井夫婦はそれまでは充分に私のそんな願望にこたえていた。いずれに関しても浮気の噂ひとつきかなかったし、地方銀行の頭取の一人息子として、進たちの暮しはなに不自由がなかった。

その夜、私は佐藤からギャラをもらい、本番を彼にまかせひと足先きに中野の保井家へ向かった。中央線に乗り替えようとするとき、私はちょっと億劫をおぼえた。その小豆いろの車内で真理子と睨みあったある日を思い出していたのだ。私はまぶたをうす赧く染めた真理子の顔をみていた。

私は、そのときは真理子に強引にひっぱって行かれたのだ。一昨年の冬のことで、満員の国電の中で真理子は大声でトン子が、トン子を、と小田富子のあだ名を呼び、恋がどうの、愛がどうの、誠実はどうのと興奮して叫ぶような声をあげた。小田富子はおなじ演劇部の仲間で、卒業後は教科書出版社につとめていた。