일본어 읽기 연습

후리가나로 읽는 일본 고전

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

吉川 英治의 新書太閤記(しんしょたいこうき)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.

N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 190,406자 · 381화면

아오조라 문고

「俺は倖せ者だ」

沁々、今も思う。幼い時からどんな逆境に泣かされた日でも、自分は不倖せだという考えは持った例のない藤吉郎であるが、きょうはわけても深くそれを思った。よく世間の不遇な人々の中に聞くのは、なぜ人間に生れたろうとか、こんな厭わしい世はないとか、自分ほど不倖せな生れつきはないとか――何でも人間は皆、自分ほど不運で不幸な者はないと思っているものらしいが、藤吉郎は、まだかつて、世の中を、また人生を、そう観て嘆いたおぼえがない。

逆境の日も楽しかった。それを乗りこえて、逆境を後に見返した時はなお愉快だった。

彼はまだ二十六である。自分でも、前途の多難は覚悟しているが、これから先とても、ぶつけて来る困難にベソをかく日があろうとは思わない。どんな濤でものりこえて見せようという覚悟が、強いて覚悟と意識しないでも肚にすわっている。そこに洋々たる楽しさが前途に眺められた。波瀾があればあるほど、この世はおもしろく観じられるのであった。

けれど彼は、

(われこそ天下の何にならん)

とか、

(武士と生れたからには百世に名をのこし、生ける間には一国一城の主とも)

などと、よく城内の若人たちが寄るとさわると、衣の袖をたぐしあげて傲語するような大言壮語はしたことがなかった。