후리가나로 읽는 일본 고전
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うえの
日和下駄 一名 東京散策記
永井 荷風
永井 荷風의 日和下駄 一名 東京散策記(うえの)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 33,955자 · 70화면
家に帰ると座敷の内には藪蚊がうなっていて、墻の外には夜廻の拍子木が聞えるのである。わたくしは芸術が其の発生し、其の発達し来った本国を離れて、気候風土及び人種を異にした境に移された場合、其の芸術の効果と云い或は其の価値と称するものの何たるかを思考しなければならなかった。言を換うれば芸術の完全に鑑賞せられ得べき範囲についておのずから一考しなければならなかったのである。
其年露西亜オペラは九月の下旬までおよそ一個月間興行していた。この間わたくしは毎夜怠らず聴きに往くに従って、初日の当夜経験したような感覚の混乱は次第に和げられて行くのを知った。音楽が誘いおこす幻想と周囲の実況とを全く分離せしめ、互に相冒さしめぬように努めることができるようになった。
露西亜オペラの一座はそれより二年を過ぎて大正十年の秋重ねて渡来し、東京に在っては帝国劇場と有楽座とに演奏をつづけた。わたくしが始めてチャイコウスキイの作曲イウジェーン・オネーギンの一齣が其の本国人によって其の本国の語で唱われたのを聴得たのは有楽座興行の時であった。斯くの如き演奏は露西亜に赴くに非らざれば、欧洲に在っても容易に聴く機会なきものであろう。