일본어 읽기 연습

후리가나로 읽는 일본 고전

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はるのやま

春の山

久生 十蘭

久生 十蘭의 春の山(はるのやま)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.

N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 8,782자 · 18화면

아오조라 문고

三月になると、空は子供が絵に塗る青のようなすき透った青さになり、薄色の山桜の下で草がはげしい緑を萌えたたせるといったぐあいになる。周平は抽象画の勉強にうちこんでいるが、そのほうは順列や二項定理の問題とおなじで、観念内の仕事だから、自然や風景に用はない。

周平は画室にあぐらをかいて、欠伸ばかりしているが、にわかに春めいてきた気候のせいばかりでなくて、人間の居ない清潔すぎる環境の影響も、多分に作用しているふうだ。松井の家は居宅そのものも大きいが、屋敷がまたとりとめのないほど広い。鎌倉と逗子の境になる光明寺の裏山をうしろに背負ったような地形で、天照山の峯を越え、名越の切通しを上から見おろすあたりまでが庭つづきになっている。いちど尾根をつたって、地境いになるらしいほうへ降りてみたが、谷もあれば川もあり、萱や葎にとじられた広い草地や、陽の目も通さない雑木林がはてもなくつづいている。この家の持主は千万円という値をつけて売りに出しているが、デフレのさなかに、こんなバカべら棒な家が右から左に売れるわけはない。見ただけで気疲れがし、愛想をつかして帰ってきた。

去年の冬、十二月もおしつまった三十日の夜、光明寺の裏山へ門松にする姫小松を盗みに行った小坪の漁師の子供が、道に迷って谷へ落ちて死んだ。