후리가나로 읽는 일본 고전
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つきのまつやま
月の松山
山本 周五郎
山本 周五郎의 月の松山(つきのまつやま)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 20,451자 · 41화면
坂を登りつめる少し手前で、孝也は馬からおり、馬を繋いだ。そして、そこでゆっくりと身支度をした。襷をかけ汗止をし、袴の股立をしぼり、草鞋の緒をしらべた。右足の足首から先は、痺れていてまったく感覚がない。だから充分に踏みこたえたり、敏速にとび込んだりすることはできなかった。激しい力を加えれば、脛のどこかで骨が折れるかもしれない。右足の骨は病気におかされて、朽木のように脆くなっているのである。孝也は丹念にその足の踏みようを慥かめ、それから坂道ではなく、松林をぬけながら斜面を登っていった。
約束の時刻よりかなり早い、まだ来てはいないだろう。こう思いながら登りつめると、うしろで馬の嘶くのが聞えた。いま繋いで来た馬である、まるで別れを惜しむかのように、続けて三度ばかり嘶いた。孝也は振返った。馬のほうではなく、もういちど茂庭家を見ようとして、――だが、まえよりも靄が濃くなったようで、視界はぼうと灰色に塗りつぶされ、屋敷の白壁も、標の樅ノ木も見ることはできなかった。
「ではさよなら、桂」孝也は口の中で云った、「どうか仕合せで、――」
孝也は砦跡のほうへ出ていった。