후리가나로 읽는 일본 고전
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たなださいばんちょうのかいし
橘外男ワンダーランド 怪談・心霊篇
橘 外男
橘 外男의 橘外男ワンダーランド 怪談・心霊篇(たなださいばんちょうのかいし)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 112,181자 · 219화면
ともかく、懐かしさと幻滅の半ばした気持で、私は犬に吠えられながら、昔住んでいた家の回りに佇んでいましたが、ふと眼を放った向うの坂上に、昔ながらの石垣の上に、厳然と城廓のようにそびえ立っている、棚田の家を見ると、そこへも足を伸ばして、昔を懐かしんでみたいような衝動を禁じ得ませんでした。誰も亡びたわけではありませんが、私のその時の気持は人亡びて山河依然たり、といったような感慨で一杯だったかも知れません。これも昔と少しも変らぬ竹藪の道を登って行くと、私は棚田の門前を通り過ぎて、沼や野原のあたりまで行ってみました。
うねうねと曲りくねった野道一杯に芒や茅が掩い乱れて、葉末の彼方に島原半島の明神ヶ岳や大内山が顔を現していることも、何の変りもありませんでしたが、この辺、人が住んでいるのやらいないのやら! しいんと身に沁みてその淋しいこと! よくもこんな淋しいところに、棚田の家では長年住んで……昔祖母が恐ろしがったのも無理はないな! と、何か鬼気の迫るようなものを感じて、またその通りを戻って来ました。
再び通る棚田の冠木門には、もちろん今ではその人の名前が出ていることと思いのほか、ヒョイと見上げた眼に相変らず棚田晃一郎と表札が出ているのです。