후리가나로 읽는 일본 고전
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しせい
消えた受賞作 直木賞編
富田 常雄
富田 常雄의 消えた受賞作 直木賞編(しせい)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 17,806자 · 36화면
「ふむ」
わしは頷いたが、邸内の人気なぞというものが、あろうなぞとは知らなかったので不思議な気がした。
「よく勤めた娘だから、別れにわしも線香の一本も手向けねばなるまい」
朝顔の浴衣を着せられ、錦紗の訪問着を逆さにかけられた奈世の、世間の娘とは変わって電髪をかけたことのない黒髪が、布団の上に豊かに這って居た。婆やが顔の白布をとった。
その時、わしは奈世の死顔に浮んだ表情を見た。それは、今までわしには見せたことのない恍惚が一ぱいに浮いているのだ。どの様にわしが燃え立ち、必死に愛撫しても、ついぞ、見せなかった恍惚の表情がくっきりと残っている。
歌麿の錦絵のなかに男女の交歓の極致に達した女の恍惚の顔を描いたものを見たことがある。わしは奈世の死面にそれを見つけたのだ。線香をともす、わしの指先は慄えた。
死んで面を脱ぐ者があるだろうか。生きている時の奈世は面をかぶって居たのに違いない。わしは憎かった。
母屋へ帰る庭園の飛石を、杉山が先に立って提灯で照らしてくれた。
「いやらしい娘だ」
飛石に庭下駄を鳴らして、わしは思わず呟いた。
「御前、今夜は暗うございます。足元をお気をつけなさいまして」