후리가나로 읽는 일본 고전
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しぶやけのしそ
渋谷家の始祖
宮本 百合子
宮本 百合子의 渋谷家の始祖(しぶやけのしそ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 68,023자 · 133화면
今まで、ただ漠然と衆に向って注がれ、放たれていた疑惑は、今あらゆる力を集注して、信子をその対象として掴んだのである。もう、正隆にとって、自分が、役所をどうして罷めたかということや、これから先、どうやって行こうなどということなどは問題ではなくなった。ただ、信子である。信子が、真実に自分を愛し、自分を信じ、その愛と信とのために、自分に送られた者であるか否かということが、唯一の疑問である。彼の生涯の希望は、ただこの一点で決せられるように思われて来たのである。
若し、信子が、ほんとに自分を扶け、自分と禍福を偕(とも)にする決心でいるのなら、生活に、まだ何かの光明がある。四方、八方から虐げられても、彼は、夫人の美と、美の持つ力とによって、何か生きて行く途を得られることを信じていた。若し彼女が、悪霊の傀儡(かいらい)でないならば、敵は、まだどこかに隙を与えているということを思う可能があると、思ったのである。それから緊張し始めた正隆の注意は、殆ど間牒のように信子夫人を踉(つ)け廻した。彼の傍にいる時も、いない時も、外との交際も、あらゆる隅々を圧えて、彼は、信子の正体を見窮めようとし始めたのである。