일본어 읽기 연습

후리가나로 읽는 일본 고전

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ちちのかたみ

父の形見

豊島 与志雄

豊島 与志雄의 父の形見(ちちのかたみ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.

N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 6,879자 · 14화면

아오조라 문고

」と矩子は一言云った。

その言葉に、彼はぞっと全身に冷いものを感じた。そして彼女を促して霊室の方へ戻っていった。

「あたしのためには、ちがいます。」

低い声で云われたので、彼が振向いてみると、矩子は唇をかみしめて、小さく首を振っていた。

それから彼はもう矩子に近寄らなかった。何か復讐に似たものが、彼の胸の中にとびこんできたのだった。現在が大切か未来が大切か、そんなことを彼はぼんやり考えていた。

正夫よ、秋山が自殺に用いた拳銃は、その後あやふやのうちに、元来の所有者たる君の父の手許に長く溜った。今でも君のところにあるかも知れない。

それから、後で分ったことだが、秋山の僅かな預金のうちから、使途不明の一千円が、自殺の半月ばかりの前に、秋山自身の筆蹟の小切手で引出されていた。それを銀行から受取ったのは、素人とは見えない様子の女だった。それは前に一寸述べておいた、君の父の愛人なのだ。然しその金は、そっくり君のために使われた筈だ。

その拳銃とその金とに、若い君は反感を持つだろうか、或は同感を持つだろうか。または、どうでもよい些事だと思うだろうか。

君の父は、それらのことに思い惑いはしなかった。