후리가나로 읽는 일본 고전
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
岡本 綺堂의 玉藻の前(たまものまえ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 130,703자 · 261화면
何とは知らず、彼は幾たびか溜息をついて、酔ったような足どりで本堂の方へゆくと、昼でも薄暗い須弥壇の奥には蝋燭の火が微かにゆらめいて、香の煙りがそこともなしに立ち迷っていた。その神秘的の空気のうちに、阿闍梨はだまって坐った。
彼はいつものように観音経を誦し出そうとしたが、不思議に喉が押し詰まったようで、唱え馴れた経文がどうしても口に出なかった。胸は怪しくとどろいてきた。ふと見上げると、正面の阿弥陀如来の尊いお顔がいつの間にか玉藻のあでやかなる笑顔と変わっていた。阿闍梨は物に憑かれたようにわなわなと顫え出した。彼はもう堪まらなくなって、物狂おしいほどの大きい声で弟子の僧たちを呼びあつめた。
「すこし子細がある。お身たち一度に声をそろえて高らかに観音経を唱えてくりゃれ」
大勢の僧は行儀よく居並んだ。読経の高い声は一斉に起こった。数珠の音もさらさらと響いた。それに誘い出されて、阿闍梨も共に声を張り上げようとしたが、彼の舌はやはりもつれて自由に動かなかった。彼の胸は不思議に高い浪を打った。
「蝋燭を増せ。香を焚け」
彼は苦しい声を振り絞ってまた叫んだ。蝋燭の数は増されて、須弥壇はかがやくばかりに明るくなった。