후리가나로 읽는 일본 고전
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めをひらく
眼を開く
夢野 久作
夢野 久作의 眼を開く(めをひらく)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 9,759자 · 20화면
そうして、それから五町ばかり先の岩の根方に横たわっている忠平の死骸の処まで、吉兵衛老人の肩につかまって、よろぼいよろぼい歩いて行った。綿のように疲れた身体を強いアルコール分がグングン馳けめぐるために、谿谷全体がぐるんぐるんと回転するように思われる両眼を見据えて、忠平の死顔を夢のように覗き込んだ。そのうちに瞼がシクシクと痛み出して、視界がボーッとなって行くのを又コスリ直して見直した。
忠平の死骸はモウ雪の中から引ずり出されていた。古びた赤縞綿ネルの布片の頬冠りから、眼と口をシッカリと閉じたしかめ顔から、剥げチョロケた紺小倉の制服から、半分脱げかかった藁靴の爪先まで一面に、微細な粉雪が霜のように凍て付いて、銀色の塑像のような、非人間的な感じを現わしていたが、その左手の二本しかない指で、鞄の口をシッカリと抓んで胸の上に抱いていた。その鞄の口を開けてみると中には東京の新聞が二つと二百円入りの価格表記の袋が、チットも濡れずに這入っていた。その死顔には何等の苦悶のあとも無く、あの人相の悪い、頑固一徹な感じは、真白い雪の中に吸い取られてしまったのであろう。あとかたもなく消え失せて、代りにあの国宝の仏像の唇に見るような、この世ならぬ微笑が、なごやかに浮かみ漂うているのであった。