후리가나로 읽는 일본 고전
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
吉川 英治의 私本太平記(しほんたいへいき)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 126,598자 · 254화면
まず鏡に向って、七十余日の髯をきれいに剃りおとす。
剃刀をつかう間は、盛高の家来が二人、番するように坐っていた。万一を惧れてであろう。すむとすぐ、
「およろしゅうございますか」
と、剃刀や耳盥なども持って退がってしまった。
風呂場には、肌着から水色の袴小袖まで、すべて新しいのが供えてあった。
「ああ久しぶりな身心地」
と、彼は浴後のからだを、縁の柱にもたせて、折ふしさしのぼる夏の夜の新月がこぼすソヨ風にしばし虚心を吹かせていた。
虫がすだく。坪(中庭)の暗がりに夕顔の花がゆれる。
彼は、都の七条の家にある気がしていた。「……小右京」と、胸で呼びかけた。呼べば妻の小右京がいまにもそこらの渡りから「はい」と答えて自分の前に楚々と来そうな気配にさえとらわれた。
妻を思うと、彼は、
「不愍な者、わが亡き後は」と、とめどなく涙がこぼれてくる。涙を拭おうともしない。いつまでも涙に頬を濡らしていたい。
――と、一ト段低い中坪の縁の向う側で、聞きつけぬ人の声が、
「……そこか」
と、問うているのが聞えた。
案内して来た家臣をそこで遠ざけてから、その人影は、静かに段を上ってきた。