후리가나로 읽는 일본 고전
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きんせいかいじんでん
近世快人伝
夢野 久作
夢野 久作의 近世快人伝(きんせいかいじんでん)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 79,469자 · 157화면
「オイ。頭山。アレは何や」
頭山翁は、その硯をかえりみて微笑した。
「ウム。あれは俺が字を書いてやる硯タイ」
奈良原翁は、それから間もなく頭山翁に見送られて玄関を辞去したが、門前の広い通りを黙って二三町行くと、不意に立止って鴉の飛んで行く夕空を仰いだ。タッタ一人で呵然として大笑した。
「頭山が字を書く……アハハハ。頭山が字を書く。アハハ。頭山が書を頼まれる世の中になってはモウイカン、世の中はオシマイじゃワハハハハハハハ……」
そこいらに遊んでいる子供等が皆、ビックリして家の中へ逃込んだ。
奈良原翁が晴れの九州入をする時に、当時二十五か六で、文学青年から禅宗坊主に転向していたばかりの筆者は、思いがけなく到翁の侍従役を仰付けられて、共々に新橋駅(今の汐留駅)に来た。翁は旧友から貰ったという竹製のカンカン帽に、手織木綿縞の羽織着流し、青竹の杖、素足に古い泥ダラケの桐下駄、筆者は五リン刈の坊主頭に略法衣、素足に新しい麻裏という扮装である。荷物も何も無い気楽さに直ぐに切符売場へ行って、博多までの二等切符を買って来ると、三等待合室の中央に立って待っている到翁が眼早く青切符を見咎めてサッと顔色を変えた。