후리가나로 읽는 일본 고전
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ぐるめにおくる
食魔に贈る
岡本 かの子
岡本 かの子의 食魔に贈る(ぐるめにおくる)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 9,619자 · 20화면
だが、もし老翁の仕事を妨げそうにでもなると誰も急いで遠慮する。老翁は今前菜の一種を拵えている。
料理卓の上にはアンショア(ひしこの塩漬)の三枚におろしたのが昨日からオリーブ油に浸けられている。それを和蘭の馬鈴薯を雪の様におろしてオリーブ油、酢、塩、胡椒で味をつけた中へなかば埋める。ゆでた海老の薄身を赤く周囲に点ずる。トマト・ケチャップをかける。
これは料理家の間にアンショア・ア・ラ・ブレトンヌと名づけられる前菜なのだ。老翁は一先ずこれを拵えて見てそれからこれをなおより善く巴里人の好みに引直そうと工風を進める。膚のつやつやしいむき玉子の一つ二つ、白葡萄酒で煮た鰻のはぜた肉などが老翁の節の短い太い指の間に取り上げられた。そしてまた老翁は考え直す。基本の味から彼の味を引き、この味を加える――老翁の頭の中では味が数学のように取扱われている。
老翁はその間に深い溜息をした。料理の心労の為では無い。死んだ息子が思い切れないのだ。老翁はラルュウの前店主エドアール・ニニヨンである。たった一人の息子は大戦のはじめにソンヌで戦死した。老翁は七十近くなった。店を弟子であり甥でもある現マネージャア、ヂュプラに譲って生れ故郷のブレターニュのルンヌスに引退した。