후리가나로 읽는 일본 고전
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まと
魔都
久生 十蘭
久生 十蘭의 魔都(まと)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 293,999자 · 578화면
されることになった。
御存じの方もあろうが、この安南王は日本名を宗方竜太郎といって、日本を愛敬する東洋の王族の中でもとりわけ日本贔屓の王様。本国政府から強要される仏国風の教化を毛虫のように忌み嫌い、わざわざ日本から教師を招聘して、専ら日本の文化に親しみ、夏冬二回政務の余暇にフラリと単身日本へやって来て、一ト月ほど滞在しては帰国するのが例になっていたが、松谷鶴子を愛するようになってからはほとんど隔月ごとに頻繁に来朝するようになったというのもまた無理のない次第。
さて松谷鶴子がいまいったようにしきりに愛人の訪問を待かねているところへ廊下の方に足音が聞こえ、やがてコツコツと扉を叩く音がするから急いで廊下を駈けて行って扉を引開けて見ると、それは待かねている宗方竜太郎でなくて、崖下のしもたやの二階に住んでいる桃沢花という縫子。畳紙に包んだ仕立物を持って入って来ると急いでテーブルの上で包を解き、眼も覚めるような茜色の式服を取出して自慢らしく繰り拡げながら鶴子の方に振り返り、
「はい、出来ました。どうぞ御覧なさい。自分ながら感心するくらいよく縫えましたの。なにしろ季節で急ぎの仕事が山ほどあるでしょう。