후리가나로 읽는 일본 고전
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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
小栗 虫太郎의 黒死館殺人事件(こくしかんさつじんじけん)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 296,741자 · 584화면
しかし、そこにはピロカルピンの薬罎はあっても、それにはどこぞと云って、手を付けたらしい形跡はなかった。したがって、減量は云うまでもないことだが、なにより最初から、一度も使ったことがないと見えて、全体が厚い埃を冠っていた。そして、薬品棚の奥深くに埋もれているのだった。法水はいったん失望の色を泛べたけれども、突然彼に、莨を捨てさせてまで叫ばせたものがあった。「そうだ支倉君、あまり君の署名が鮮かだったものだから、それに眼が眩んで、僕は些細な事までもうっかりしていたよ。あながちピロカルピンの所在は、この薬物室のみに限らんのだ。元来あの成分と云うのが、ヤポランジイの葉の中に含まれているんだからね。サア、これから温室へ行こう。もしかしたら、最近そこへ出入りした人物の名が、判るかもしれないから……」
法水が目指したところの温室と云うのは、裏庭の蔬菜園の後方にあって、その側には、動物小屋と鳥禽舎とが列んでいた。扉を開くと、噎とするような暖気が襲ってきて、それは熱に熟れた、様々な花粉の香りが――妙に官能を唆るような、一種名状しようのない媚臭で、鼻孔を塞いでくるのだった。