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ほんこじ
□本居士
本田 親二
「新小説 明治四十四年十二月号」春陽堂、1911(明治44)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,638 字 · 4 页
」と言ったんですね。そうすると、その人は入って来たんです。白装束のまんま、死んだ時の姿で、そうして庫裡へ上って来た。
ちゃんと座敷へ入って、坐蒲団の上へ坐ったそうです。
で、普通の挨拶をしたんですね、何と挨拶をしたか、それは知らないが。
その時、その妙善の梵妻が、お茶を持って入って来たんです。で、左に右夫妻とも判然見た。
それから、その、梵妻の持って来たお茶を、その死人が飲み乾したんです。そして、
「今夜少しお願いがあって来た。」と言ったんです。
「甚麼事ですか、出来る事なら、何でもやりましょう。」と言うと、「実はその、今日墓石を建てて貰った。ところがその戒名の字が一字違っている。『本』という字が『木』になっている。しかし家の連中は女子供ばかりだから屹度気が着かぬに相違ない。お前に頼むから『木』の字を『本』に直してくれ」と云った。
それから、妙善は、
「ええ那様事なら訳はないです。それじゃ明朝、左に右行って、検べてみて直しますが、そう云う事は長念寺の和尚の処へも行って、次手にお談なすったら可いでしよう。」と言うと、「そうか、それじゃ帰りに一寸寄って、話して行こう。