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ああぎょくはいにはなうけて
ああ玉杯に花うけて
佐藤 紅緑
「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页
安場は実際先生思いであった。かれは帰省中には毎朝かならず先生をたずねて水をくみ飯をたき夜の掃除をした。先生は外へ出ると安場の自慢ばかりいう。
「あいつはいまに大きなものになる」
先生はわずかばかりの汽車賃があればそっと東京へ出て一高を視察にでかける、そうして安場がどんな生活をしているかを人知れず監視するのであった。そのくせかれは安場に向かっては一度もほめたことはない。
「きみは英雄をなんと思うか」
「英雄は歴史の花です」と安場は即座に答える。
「カアライルをまねてはいかん。英雄は花じゃない、実である。もし花であるならそれは泛々たる軽薄の徒といわなきゃならん。名誉、物質欲、それらをもって目的とするものは真の英雄とはいえないぞ、いいか。英雄は人類の中心点である、そうだ、中心点だ、車の軸だ、国家を支える大黒柱だ、ギリシャの神話にアトラス山は天が墜ちるのを支えている山としてある。天がおちるのを支えるのは英雄だ、花だなんてそんな浮わついた考えではまだ語るにたらん。もっと修養しろ馬鹿ッ」
すべてこういう風である、どんなにばかといわれても安場はそれを喜んでいた。
「先生はありがたいな」