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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

最初はむずかしくもありつまらないと思ったが、だんだんおもしろくなってきた、一日一日と自分が肥っていくような気がした。おれは入学試験を受けるとき、ほんの十日ばかり先生が準備復習をしてくれた。

「こんな旧式なのでもいいのか知らん」とおれは思った。

「だいじょうぶだいけ」と先生がいった、おれはいった、そうしてうまく入学した。

「なあチビ公」

安場はなにを思ったか目に一ぱい涙をたたえた。

「試験の前日、先生はおれにこういった」

「安場、腕ずもうをやろう」

「ぼくですか」

「うむ」

先生はがちょうのように首が長く、ひょろひょろやせて、年が老いている。おれはこのとおり力が自慢だ、負かすのは失礼だと思ったが、さりとて故意に負けるとへつらうことになる、互角ぐらいにしておこうと思った。

「やりましょう」

先生は長いひざを開いて畳にうつぶしになった。さながら栄養不良のかわずのよう!

「さあこい」

「よしッ」

おれもひじを畳についた、がっきと手と手を組んだ、おれはいい加減にあしらうつもりであった、先生の痩せた長い腕がぶるぶるふるえた。

「弱虫! なき虫! いも虫! へっぴり虫!」と先生はいった。