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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

「先生こそ弱虫です」

「なにを!」

「どっこい」

おれは少しずつ力をだして不動直立の態度をとるつもりであった。だが先生の押す力がずっとひじにこたえる。

「弱いやつだ、青年がそれでどうする、米の飯を食わせておくのはおしいものだ、やい、いも虫、なき虫、わらじ虫!」

あまりしつこく虫づくしをいうのでおれもちょっと癪にさわった。

「いいですか、本気をだしますぞ」

「よしッ、虫けらの本気はどんなものか、へっぴり虫!」

「よしッ」

おれは満身の力をこめて一気に先生を押したおそうとした、先生の腕が少しかたむいた。

「いいかな」

先生はこういって、「うん」と一つうなった、たよたよとした細い腕はがきっと組んだまま大盤石!

「おやッ」

おれは頭を畳にすりつけ、左の掌で畳をしっかとおさえ肩先に力をあつめて押しだした。

「虫があばれるあばれる」と先生はげらげらわらった。おれはどうもふしぎでたまらない。負けるはずがないのだ。

「いいかな」

先生はこういっておれのこぶしをひた押しに倒してしまった。

おれは汗をびっしょりかいて、ふうふう息をはずませた。

「どうだ」

首を傾げてふしぎがってるおれの顔を見て先生はわらった。