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ああぎょくはいにはなうけて
ああ玉杯に花うけて
佐藤 紅緑
「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页
鹿毛はその広い胸をぐっとひきしめて耳を後方へぴたりとさか立てた。かれは尋常ならぬ敵と見てまず前足をつっぱり、あと足を低くしてあごを前方につき出した。かれは赤が第一に耳をめがけてくることを知っていた、でかれはもし敵がとんできたら前足で一撃を食わしよろめくところを喉にかみつこうと考えた。四つの目は黄金色に輝いて歯は雪のごとく白く、赤と鹿毛の毛波はきらきらと輝いた。八つの足はたがいに大地にしっかりとくいこみ双方の尾は棒のごとく屹立した。尾は犬の聯隊旗である。
「やっしいやっしい」
人間どもの叫喚は刻一刻に熱した、二つの犬は隙を見あって一合二合三合、四合目にがっきと組んで立ちあがった。このとき木俣の身体がひらりとおどりでて右足高く鹿毛の横腹に飛ぶよと見るまもあらず、巌のこぶしが早く木俣のえりにかかった。
「えいッ」
声とともにしし王の足が宙にひるがえってばったり地上にたおれた。
「いけッ」
二年生はこれに気を得て突進した。
「くるなッ」
巌がこうさけんだ、かれは倒れた敵をおさえつけようともせずだまって見ていた、かれは木俣の寝業をおそれたのである、木俣の十八番は寝業である。