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ああぎょくはいにはなうけて
ああ玉杯に花うけて
佐藤 紅緑
「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页
久保井校長のつぎにきた熊田校長というのはおそろしく厳格な人であった、久保井先生は温厚で謙遜で中和の人であったが、熊田先生は直情径行火のごとき熱血と、雷霆のごとき果断をもっている。もし久保井校長が春なら熊田校長は冬である、前者は春風駘蕩、後者は寒風凛烈! どんなに寒い日でも熊田校長は外套を着ない、校長室に火鉢もおかない、かつて大吹雪の日、生徒はことごとくふるえていた日、校長は校庭にでて雪だるまを転がしまわった、その髪となく目となく口となく、雪だらけになったが少しもひるまなかった。
久保井先生が去ってからつぎにきたるべき校長に対して生徒も町の人も一種の反感をもっていた、だが日を経るにしたがって新校長の実践躬行的な人格は全校を圧し、町を圧しいまではだれひとり尊敬せぬものはない。
「黙々先生と熊田先生とどっちがこわいだろう」
町の人々はこううわさした。それだけ厳格な熊田先生が今中学校内に不良少年があると聞いたのだからたまらない。
「厳罰に処すべしだ、よく調べてくれ」
校長の命令に職員は目を皿のごとく大きくしてさがしたてた。
と、まただれがいうとなくそれは手塚だといううわさが立った。