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ああぎょくはいにはなうけて
ああ玉杯に花うけて
佐藤 紅緑
「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页
場内にはたばこの煙がもうもうと立ちこもって不潔な悪臭が脳を甘くするほどに襲うてくる、こしかけといってもそれはきわめて幅のせまい板を杭にうちつけたもので、どうかすると尻がはずれて地にすべりこみそうになる、それを支えているのはなかなか容易なことではない、なぜこんな不親切な設備をするかというに、三等席を不自由にしておくとお客はすぐ疲れて二等席に移るからである。お客を苦しめて金もうけをしようという興行師の策略だからたまらない。
実際興行師ばかりが悪いのでない、お客そのものも、そんなことは平気である、そのかわりにかれらはたばこものめば、物も食う、みかん、塩せんべい、南京豆、キャラメル、かれらは絶えず口を動かしている。みかんなどは音がせぬから無事だが、隣席の人が塩せんべいをボリボリ食うのでその音だけでも写真を見る興味を減ずることおびただしい、いろいろな食物から発する臭気やたばこの煙や不潔な身体から発する熱気が混合して一種のにごった空気となり、人間の鼻穴や口腔から侵入するために、大抵の人は喉の渇きを感ずる、ここにおいてラムネを飲んだりサイダーを飲んだりする。