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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

大抵光一は五杯の飯を食べるが文子は三杯であった、5対3ではあるが、光一の方はスピードが速いのでほとんど同時におしまいになる、それから一緒に家をでる。

「おまえ後からおいで」

「兄さんは男だから後になさいよ」

この争いは絶ゆることがない、二、三年前までは一緒に肩を並べていったものだが、このごろではふたり揃うてゆくのはきまりが悪い。特に光一に取っては迷惑至極であった。

「きみの妹は綺麗だね」

こう友達にいわれてからかれはたとえ親父の葬式の日でも妹と一緒には歩かないと覚悟を決めた。

だがかれは妹が好きであった、妹はすらりと姿勢がよく、おさげの脳天に水色のちょうちょうのリボンをつけているが、それが朝日に輝いていかにもかわいらしい、かれはまた文子の長いえび茶のはかまやその下から見えるまっすぐな脚と靴の恰好が好きであった。文子は洋服よりも和服が似合う。文子はまただれよりも兄さんが好きであった、野球試合のあるときにはかの女はいつも応援旗を持ってでかけた、兄さんが負けたときには家へ帰って夕飯も食べずに寝てしまうのでいつも母にわらわれた。

そのくせふたりはおりおり喧嘩をした、文子の一番嫌いなことは顔がふくれたといわれることである。