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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

哀れ文子は四苦八苦の死地に陥った、かの女は去るにも去られなくなった。と階段の音が聞こえてひとりの学生が現われた。

「やあ」

文子は顔をあげた、それは兄の友の手塚であった。かれはロシアの百姓が着るというルパシカに大きな縁のあるビロードの帽子をかぶっていた。

「どうしたの? 文子さん」とかれはいった。文子は手塚の腕にすがりついてなきだした。

「お前達はどうかしたんじゃないか」と手塚はなじるように一同に向かっていった。

「なにもしないよ」とろばがいった。

「悪いことを教えると承知せんぞ」

手塚の語気はますます鋭い。

「いやにいばるのね」と新ちゃんがいった。

「だまってろ」と手塚はどなりつけて文子の涙をハンケチで拭いてやり、

「心配しなくてもいいよ、さあ僕と一緒に行きましょう」

手塚につれられて文子は外へ出た、文子は歩きながら一伍一什を手塚に語った。

「わかってるよ」と手塚はいかにも侠客のような顔をしていった。

「あいつらはね、あなたをわなにかけて銭をゆすろうて計略なんだ、ぼくが引きうけていいようにするから安心していらっしゃい」

「でも私新ちゃんに四十銭と活動のお銭を返さなきゃならないわ」