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ああぎょくはいにはなうけて
ああ玉杯に花うけて
佐藤 紅緑
「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页
「逃げたか」とだれかがいう。
「逃げるもんか、日本男児だ、大沢一等卒は銃剣をまっこうにふりかぶって」
「らっぱはどうした」
「らっぱは背中へせおいこんだ」
「らっぱ卒にも銃剣があるのか」
「あるとも、兵たる以上は……まあだまって聞け大沢一等卒は……」
「いまや小使いになってる」
生徒は「わっ」とわらいだす、大抵このぐらいのところで軍談は中止になるのだが、かれはそれにもこりず生徒をつかまえては懐旧談をつづけるのであった。大沢一等卒がはたしてそれだけの武功があったかどうかは何人も知らないことなのだが、生徒間ではそれを信ずる者がなかった。大沢小使いの一番おそれていたのは体操の先生の阪本少尉であった、かれは少尉の顔を見るといつも直立不動の姿勢で最敬礼をするのであった。
「小使い! お茶をくれ」
「はい、お茶を持ってまいります」
実際大沢は校長に対するよりも少尉に対する方が慇懃であった、生徒はかれを最敬礼とあだ名した。
最敬礼のもっともきらいなのは生蕃であった、生蕃はいつもかれを罵倒した。生蕃は大沢一等卒が牙山の戦いで一生懸命に逃げてアンペラを頭からかぶって雪隠でお念仏をとなえていたといった。