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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

中央に校長のまばらに白い頭と謹直な顔が見えた、その左に背の高いつるのごとくやせた漢文の先生、それととなりあって例の英語の朝井先生、磊落な数学の先生、右側には身体のわりに大きな声をだす歴史の先生、人のよい図画の先生、一番おわりには扉口に近く体操の先生の少尉がひかえている。

「あとをしめて」と少尉がどなった。手塚はあわてて扉をしめた。

「阪井はどうして柳をうったのか」と少尉がいった。

「ぼくにはわかりません」

「わからんということがあるかッ」

少尉はかみつくようにどなった。

「知ってるだけをいいたまえ」と朝井先生がおだやかにいった。

「幾何の答案をだして体操場へゆきますと柳がいました。そこへ阪井がきました、それから……」

手塚はさっと顔を赤めてだまった。

「それからどうした」と少尉がうながした。

「喧嘩をしました」

「ごまかしちゃいかん」と少尉はどなった。「どういう動機で喧嘩をしたか、男らしくいってしまわんときみのためにならんぞ」

「カンニングのその……」

「どうした」

「柳が阪井に教えてやらないので」

「それで阪井がうったのか」

「はい」

「一番先に答案ができたのは柳だ、それに柳が阪井を救わずに教室を出たのは卑怯だ、利己主義だといったのはだれか」