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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

と少尉は涙ぐんでいった。

停学を命ずという掲示が翌日掲げられたとき、生徒一同は万歳を叫んだ。だがそれと同時に阪井は退校届けをだした。校長はいくども阪井の家を訪うて退校届けの撤回をすすめたがきかなかった。

校長はまたまた柳の見舞いにいった。光一の負傷は浅かったが、なにかの黴菌にふれて顔が一面にはれあがった。かれの母は毎日見舞いの人々にこういって涙をこぼした。

「阪井のせがれにこんなにひどいめにあわされましたよ」

それを見て父の利三郎は母をしかりつけた。

「愚痴をいうなよ、男の子は外へ出ると喧嘩をするのは仕方がない、先方の子をけがさせるよりも家の子がけがするほうがいい」

そのころ町々は町会議員の選挙で鼎のわくがごとく混乱した、あらゆる商店の主人はほとんど店を空にして奔走した。演説会のビラが電信柱や辻々にはりだされ、家々は運動員の応接にせわしく、料理屋には同志会専属のものと立憲党専属のものとができた。

阪井猛太は巌の父である、昔から同志会に属しその幹部として知られている、その反対に柳利三郎は立憲党であった、そういう事情から両家はなんとなく不和である、のみならずこのせわしい選挙さわぎの最中に阪井の息子が柳の息子の額をわったというので、それを政党争いの意味にいいふらすものもあった。