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ああぎょくはいにはなうけて
ああ玉杯に花うけて
佐藤 紅緑
「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页
「もういいもういいわかりました、だれにもいわないようにしてな、いいかね、いわないようにな」
と父はしきりにいった。
「きっと、きっと!」
覚平はこういって家をでていった、光一ははじめて例のさしいれものは父であることをさとった。その翌日から町々を顛倒させるような滑稽なものがあらわれた。懲役人の着る衣服と同じものを着た覚平は大きな旗をまっすぐにたてて町々を歩きまわるのである。旗には墨痕淋漓とこう書いてある。
「同志会の幹事は強盗の親分である」
かれは辻々に立ち、それから町役場の前に立ち、つぎに阪井の家の前に立ってどなった。
「折詰をぬすんだやつ、豆腐をぬすんだやつ、学校を追いだされたやつ、そのやつの親父は阪井猛太だ」
巡査が退去を命ずればさからわずにおとなしく退去するが、巡査が去るとすぐまたあらわれる、町の人々はすこぶる興味を感じた、立憲党の人々はさかんに喝采した、ときには金や品物をおくるのであったが、覚平は一切拒絶した。
これがどれだけの効果があったかは知らぬが選挙はついに立憲党の勝利に帰した。覚平は町々をおどり歩いた。
「ざまあ見ろ阪井のどろぼう!」
もう光一は学校へ通うようになった、とこのとき校内で悲しいうわさがどこからとなく起こった。