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ああぎょくはいにはなうけて
ああ玉杯に花うけて
佐藤 紅緑
「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页
「そうだ、無論だ」
講堂の壁がわれるばかりの喝采と拍手が起こった。
「小原、おねがいしてくれ、先生におねがいしてくれ」
だれかがすきとおる声でこういった。校長はまっさおになってこの体を見ていた。自分が手塩にかけて教育した生徒がかほどまで自分を信じてくれるかと思うと心の中でなかずにはいられなかった。
「先生!」
小原は校長の方へ向きなおっていった、そのまっ黒な顔に燃ゆるごとき炎がひらめいた、広い肩と太い首が波の如くふるえている。
「先生!」
かれはふたたびいったが涙が喉につまってなにもいえなくなった。
「校長先生!」
こういうやいなやかれは急に声をたててすすりあげ、その太い腕を目にあててしまった。講堂は水を打ったようにしずまった、しぐれに打たるる冬草のごとくそこここからなき声が起こった、とそれがやがてこらえきれなくなって一度になきだした。漢文の先生は両手で顔をかくした、朝井先生は扉をあけて外へでた、他の先生達は右に傾き左に傾いて涙をかくした。
校長はしずかに講壇に立った。低いしかも底力のある声は、くちびるからもれた。
「諸君! 不肖久保井克巳が当校に奉職してよりここに六年、いまだ日浅きにかかわらず、前校長ののこされた美風と当地方の健全なる空気と、職員諸氏の篤実とによって幸いに大瑕なく校長の任務を尽くし得たることを満足