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あなたもわたしも

あなたも私も

久生 十蘭

「毎日新聞」1954(昭和29)年10月29日~1955(昭和30)年3月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,405 字 · 263 页

青空文庫

エゴイズムといったようなもの……」

由良は欠伸をしながら、壁の電気時計を見あげた。

「おしゃべりは、これくらいにしておきましょう。約束は何時なの?」

「四時です」

「自信がありそうなことを言っているけど、あてになる話なのかしら」

「西荻窪へ、アメリカから、また手紙が来ていました。届けてやると言って、預ってきましたが……」

由良が椅子から身体を乗りだした。

「この前の手紙のつづき、といったようなものなの?」

「水上氏の遺言に立会った、二人の証人のうちのひとり……シアトルの有江曽太郎というひとの手紙なんですが、おばさまとしては、聞きにくいところがあるかもしれない……本来なら、長女のところへ行くはずのものが、なぜ、あなたを素通りして、お孫さんのサト子さんのほうへ行くようになったか、そのへんの事情が、その手紙に、くわしく書いてありました」

「オセッカイな手紙だわね」

芳夫が、白々とした顔でつづけた。

「終戦の四年目に、ご尊父が乞食のような恰好で、アメリカから帰っていらした……」

「目もあてられない様子だったわ」

「じぶんのもののような顔で、居すわっていられるが、飯島の家は、本来、水上氏のものなんでしょう。