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あなたもわたしも

あなたも私も

久生 十蘭

「毎日新聞」1954(昭和29)年10月29日~1955(昭和30)年3月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,405 字 · 263 页

青空文庫

「神月は、これと、どういうツナガリがあるのかしら?」

「水上氏が、苗木の鉱山で砂鉄をとっていた磁気工業から、採掘権の委譲をうけるとき、神月から、いくらか金を借りている。坂田が水上氏の借金を返済したという話は聞かないから、鉱業権を移すような場合には、出資者として、神月はものをいえる立場にあるわけです」

「あんなひとが挾まっているとは、あたしも知らなかった」

「有江氏の手紙で、わかったことなんでしょ。しかし、おやじは、神月のほうは問題にしていない。秋川から仕送りをうけて、食っている状態だから、どう動きだそうと、たいしたことはない。心配なのは、むしろ秋川氏のほうです」

由良は、びくっとして芳夫の顔を見た。

「秋川って、もと開発銀行のなにかをしていた、秋川良作のことなの?」

「あの秋川……細君が死んでから、ひっこんでいるけど、買う気になれば、十三億くらいの金は、どこからでも持ってくる。アメリカの原子力委員会が、折紙をつけたほど確かなものなら、どこへもやらずに、日本にとっておきたいと、たれにしたって、思うでしょうから」

由良が溜息をついた。

「秋川までがねえ……それで、なにか、それらしいことがあるの?」