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あなたもわたしも
あなたも私も
久生 十蘭
「毎日新聞」1954(昭和29)年10月29日~1955(昭和30)年3月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,405 字 · 263 页
坂田は、手をあげて、冷淡にさえぎった。
「詩ですか? 詩なら、たくさんだ。またこのつぎに、ゆっくりやってもらいましょう」
芳夫は、自尊心を傷つけられた子供のように、えらい金切声でやりかえした。
「詩ではありません。告発の理由といったようなものです……その後、水上氏は落魄し、ひどい恰好で日本へ帰ってきて、恵那の奥の郷里に落着いた……ところで、そのへんの谷のようすは、水上氏の目には、アメリカで見たウラニウムの出る谷々の形相と、あまりにもよく似ている。ガイガー計数管を持ちだして、あたってみたら、すごい反応があった……というんです」
「君は、むずかしいことを、簡単にかたづけてしまう……たいした頭だよ」
「いや、手紙の受け売りです……苗木の鉱山は、三井のあとを受けて、磁気工業が砂鉄を掘っていたが、モノにならないので、ほうりだしてしまった……アメリカでは、ウラニウム・ラッシュで、えらいさわぎをしていたが、日本では、そんなことは知らない。水上氏は、六千五百万坪、七十鉱区の鉱業権を、ただみたいな安い金で取得して、川床の砂をアメリカへ持って帰って、原子力委員会へ送ってしらべてもらったら、確度十分で、売る気があるなら、七十鉱区を、一鉱区五万ドル、三百五十万ドル、十二億六千万円で買ってもいいという話になった……そうですね?」