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あめんちあ
あめんちあ
富ノ沢 麟太郎
「改造」1911(明治44)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,594 字 · 83 页
彼はまぶしく天空を見上げた。
溜息が漏れた。
汚く湿った土壌は、遊糸のような日光を貪り吸うていた。
水蒸気がゆらめいていた。
彼は思い出したようにお柳の家の方を見た。
お柳は台所の隅で、立ち悩むままに顔を蔽わずにまた泣きじゃくっていた。
お柳は昨夜から泣きつづけていたのであったろうか。
彼は再び部屋へ戻らなければならなかった。
彼はお柳へ向けて湧きはじめた思いやりを殺さなければならなかった。
彼は彼女を恐れた。
―――――
「お柳は祖父さまが死んだので泣いてばかり居ります。
」
その日の夕方、彼は井戸端の会話の一節に、こう言うている老婦の言葉を聞いた。
お柳の祖父? 彼はついぞその人を見かけなかった。
「永く床についていた人であろう?」
彼はふと自分の故郷の言葉で、死の意味を現わす言葉を無意識に呟いた。
「床?」
彼は再びこう呟いて、自分自身を顧みた。
そうして彼は彼女の祖父の死よりも、彼女の悲観にも増して、この床と言う言葉に悩まされた。
彼は自分の躯が、裂け、破れ、乱れ散るように、悩乱した。
そうして彼は、自分が昼も夜も弁えずに床に横わっていることを怕れはじめた。
「死ぬぞ! おれは死ぬぞ!」