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あるかいそうから
ある回想から
宮本 百合子
「日本評論」1946(昭和21)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,899 字 · 14 页
勤労階級と、文学が遊離してきた原因も、この事情の他の一面のあらわれであった。古風なものの考えかたでは、頭脳の労作と筋肉的労作との間に、人間品位の差があるようにあつかわれた。社会のための活動の、それぞれちがった部門・専門、持ち場というふうには感じられていなかった。その古風さに、近代の出版企業が絡んだ。出版企業は、作家を原料加工業、読者を市場としてみるにすぎない。営利出版は、本質がそうである。将来にわたる文化の沃土として作家や読者大衆をみない。この条件は、作家をわる巧者にして、自分にとっても曖昧な「文学性」の上に外見高くとまりつつ稼ぎつづけで、消耗されてきたのである。
戦争の年々は、私たちすべてに、苛烈な教訓を与えた。個々の作家の才能だけきりはなしてどんなに評価しても、全般にこうむる文化暴圧に対抗するにはなんの力でもなかったことを、まず学んだ。それにつけても、文筆の活動で生計を立ててゆかなければならない私たちの必要は、食うためにはそれもしかたがない、という過去、あるいは現在の諸条件を、生存するばかりか人生のための仕事なのだからこそ、ここまで高まらなくてはならないと社会的に主張し、努力してゆくのが、私たち作家の任務であると知らしてきていると思う。