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あるかいそうから
ある回想から
宮本 百合子
「日本評論」1946(昭和21)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,899 字 · 14 页
をどんな目にあわせることになったか、また、自分なんかは、と測定した個々の人の文学の才能や人生への確信を、どんな過程で崩壊させていったかという事実を顧みると、惨澹たるものがある。
野蛮な権力は、文学面で狙いをつけた一定の目標にむかって、ほとんど絶え間のない暴威をふるった。一人の人間の髪の毛をつかんで、ずっぷり水へ漬け、息絶えなんとすると、外気へ引きずり出して空気を吸わせ、いくらか生気をとりもどして動きだすと見るや、たちまち、また髪を掴んで水へもぐらせる、拷問そっくりの生活の思いをさせた。
一九三二年の春から一九四五年十月までの十三年間に、日本の一作家たる私が、ともかく書いたものを発表できたのは、三年九ヵ月ほどであった。あとの九年という歳月は、拘禁生活か、あるいは十三年度の一年半、十六年一月から治安維持法撤廃までの執筆禁止の長い期間にあたっている。
公衆の面前で、一定の人間を、これでもか、これでもか、というふうにあつかったことは、直接そういう目にあうものを極度に苦しめたばかりでなく、ある距離をもってそのぐるりをかこみ、その光景を目撃している、より多数の、より不安定な条件におかれているものの精神を毒することはおびただしかった。