轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あるこうぎしょ
ある抗議書
菊池 寛
「中央公論」中央公論社、1919(大正8)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,272 字 · 34 页
犯人は犯人は」と、叫びかけました。刑事には、私が狂乱したようにも見えたでしょう。私は、まだ右の手から離して居なかった樫の棒を握りしめながら、此の刑事にでも飛びかかりそうな気勢を示しました。刑事は、遉に気の毒に思ったのでしょう。
「いやお察し申します。先刻見えました警部さんなども、大変気の毒がって居たようです。非常線を張りましたから、犯人は案外早く上るかも知れません」と、云いました。が、私は姉夫婦を殺された無念と悲しみとで一刻もじっとして居られんように思いました。が、何をしてよいのかどう行動してよいのか丸切り夢中で、ただ異常に興奮するばかりでした。私は息をはずませながら、
「犯人は強盗ですか、それとも遺恨ですか」と、訊きました。
「いやまだ判りませんが、多分は強盗でしょう。長生郡と遣口が、同じだとか云って居ましたよ」と、刑事は答えました。私は、そう答える刑事の職業的な冷淡さが、癪に触るようにさえ思いました。姉夫婦が、悲惨な最期を遂げたのも、つまりは千葉県警察の怠慢であるように思いまして、私は此の刑事を頭から罵倒してやりたいようないらいらした気持をさえ感じました。