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うすゆきしょう
うすゆき抄
久生 十蘭
「オール讀物」1952(昭和27)年1月号~3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,454 字 · 59 页
さっそく今夜とりかかるか。そうときめよう」
と鷹揚にうなずいてみた。
上の谷戸に住む青山大炊介と名乗る貧郷士は、風摩小太郎の遺孤だと知ったら、そうして、千人にもあまる乱破の結束が大炊介を陰の大将にし、当人の好むと好まぬにかかわらず、日毎、実誼な合力をしていると知ったら、心の慢った蘆屋道益でも、災厄をみずから招きよせるような無謀な企てはしなかったろう。娘と貧郷士のただならぬ漆着を堰きわけるにしても、もっといい方法を考えだしたことだろうが、これも因縁のしからしむるところで、是非もない次第であった。
猪狩は夜にかぎるということはないが、しかしそのときは夜狩だった。外国の浜里で自在に劫略もする、事を好む船手が十人ばかり、素ッ裸に茜染の下帯をしめ、小玉打ちの上帯に三尺八寸もある朱鞘の刀。柄だけでも一尺八寸もあって、それに細鍔をつけ、鐺は銀で八寸ばかり削ぎ継をし、おなじ拵えの二尺一寸の打太刀。髪の毛はわざと掴み乱して荒繩で鉢巻をし、黒革の脚絆を穿いて燧石銃を担いでいる。これはその後、京、堺を荒しまわった茨組の風俗になった。そういう異形の一団が淡い月影を踏みながら、塀外の石高道を上の谷戸のほうへ踏み上って行くのを、道益は山邸の座敷の縁から見あげていたが、妻戸をたて切って褥にかえると、それなり、どうしたと思いもしなかっ