轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
うすゆきしょう
うすゆき抄
久生 十蘭
「オール讀物」1952(昭和27)年1月号~3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,454 字 · 59 页
その間、道益といえども茫然と手を束ねていたのではなかった。近くは日金山から長尾峠、遠くは丹沢、籠坂峠のあたりまで人をやって手掛けをたずねさせたが、とうとう消息知れずというところに落着した。
癩、天疱瘡、赤狼斑など天刑病者の聚落は、山間僻陬のところどころに散在したが、ほとんどすべてが人外境を形成し、他郷から入りこんだ者はかならず命を奪うことになっている。谷戸へ上った船手は、癩村の禁忌に触れたので上手に始末されたのだと観念したが、道益の心中はおだやかではなかった。道益ほどの老獪な男でも、腹をたてるときにはやはり腹をたてるので、伜や娘のあぶない加減の身の上も忘れ、おのれの手で谷戸の貧郷士を射ちとめてやりたいというひとつのねがいに凝り固まっているようにみえた。夕方、船屋敷からひきあげてくると、機嫌よく一家で団欒し、このごろ齢のせいで睡気づいて困るなどといい、匆々に自分の部屋へひきとるが、それは見せかけで、池泉に向いた寝間に入ると、日の暮れきらぬうちからモスケッタ銃を腰だめにし、庭端の森のほうを見込んでぎょろぎょろしていた。
秋も闌け、十月も半ばをすぎると、相模の山々の漆やぬるでに朱が刷し、月のない夜闇がひとしお色濃く感じられるようになった。